「マーケティング活動」の定義

「マーケティング活動」の定義

 来年の2月に、毎年秋に創業スクールの講師としてお招きいただいている本庄早稲田国際リサーチパークにて、丸一日のマーケティングの研修の講師を務めることになりました。これまで、創業スクールの中ではおおよそ2時間ほど時間を取って、マーケティングの基本的な考え方と、顧客とのコミュニケーションに関する考え方やツールの説明、メッセージの作り方を紹介してきました。今回の研修では、対象者が創業者ではなくすでに事業を行っている経営者や実務担当者の方になるので、より実践的に、現在行っているマーケティング活動のブラッシュアップになるような時間になればと思い、準備を進めています。

(本庄早稲田国際リサーチパーク ホームページへのリンク)

「マーケティング」とは「売れる仕組みづくり」

 ところで、「マーケティング」という言葉を聞いてどんな活動を思い浮かべるのか、それは聞く方のバックグラウンドによって様々ではないかと思います。ちなみに私がこれから創業を目指す皆さんにお伝えする時は、色々な書物や記事などを一通り参照もしたうえで、そのエッセンスであろうと思う内容として、「売れる仕組み、買ってもらえる仕組みを作ること」と紹介しています。基本的に、営業、宣伝活動には資源が必要(ヒト、モノ、カネ)ですが、保有する資源には限りがあります。そして、これから創業する皆さんは特に資源の制約が大きいので、「できるだけ何もせずに」「勝手に」売れてくれる仕組みを作れると強いです、ということをお伝えしています。もちろん、簡単なことではありませんが。

 ところで、私がメーカーで商品企画の仕事をしている頃、マーケティングの担当者は別部署、あるいは別会社の方でした。日本のメーカーにおいては、「商品本部」「マーケティング本部」といった区分けで商品企画を含むものづくり部隊と、マーケティング部隊(販売、広告宣伝、流通など、、、)を区分けする組織形態が多く見られます。さらに、ものづくり部門は「事業部」側にあり、一方の販売部門は「マーケティング社」のように別会社となっている形態もよく見られます。

「商品企画」は「マーケティング」なのか?

 一方、メーカーを辞めて商学研究科に入り、マーケティングの授業もいくつか受けましたが、そこで認識したのは、教科書における「マーケティング」の定義は、こうした考え方とは少し異なる、ということでした。マーケティングの教科書にはまず間違いなく登場する、「マーケティングミックス(マーケティングの4P)」では

・Product=どんな商品を提供するか、品揃えはどうするか

・Place=どこで売るか

・Price=いくらで売るか

・Promotion=どのようにお客様に知ってもらうか

という形でマーケティングの具体的な打ち手(戦術)を整理します。商品を企画することは、この中の「Product」の中に含まれます。つまり、商品企画もマーケティング、すなわち売れる仕組みづくりの一部である、という考え方です。(どういう品揃えをするかという「商品戦略」という意味合いも強いのですが)

 メーカーにいるときにも「マーケティングの4P」はもちろん知っていましたし、資料などに使ったこともあります。また、部署内でも「売る時のことを考えて商品企画する」ということは言われていました。ただ、現実的な組織としては、4Pの他の3つは他の部署、または別の会社の担当者が担っていました。もちろん、それぞれが専門知識を活かして期待通りの成果が得られることもありましたが、それぞれの施策がちぐはぐなものになってしまい、うまく行かない場合もあったように思います。本当はその4Pをうまく設定できるようにチームをまとめることが私のミッションだったのでしょうが、その意識が足りなかったようにも思います。

中小企業の商品開発は一気通貫で勝負!

 そして、大学院での研究とその後の中小企業支援を経て、私の今の思いは、 「中小企業は、ものづくりもマーケティングもデザインも、すべて一気通貫で勝負する!」 ということです。ものづくり、サービスづくりにおいては、大企業であれ中小企業であれ、商品を企画した人(商品のコンセプトを考えた人、それは経営者かもしれないし、デザイナーかもしれないし、マーケッターかもしれません)が、その後の商品開発~消費者に届けるまでに関わることが望ましく、そのプロセスをデザインできる能力を持つ人がそのポジションに立てればさらに良い、と思っています。

 とはいえ、大企業のものづくりにおいてそれを行うことはやはり簡単ではありません。であるならば、それを逆手にとって中小企業がその体制で商品開発を進めることが、 大企業を含む競合とも戦える魅力的な商品を作ることにつながると考えています。


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