ヒット商品が生まれる理由【2020年上半期編】

ヒット商品が生まれる理由【2020年上半期編】

 日本中、世界中で自粛の嵐に見舞われる中、それでも季節は流れ、今年ももう6月半ばになってしまいました。この時期恒例の上半期のヒット番付が発表されています。以前このブログでは雑誌「日経トレンディ」2019年のヒット商品ランキングを紹介しましたが、今回は「日経MJ」のヒット商品番付から、今年の上半期の消費動向について、考察してみたいと思います。

外出自粛、巣ごもり商品を反映した番付

 今年の上半期は、当然ながらコロナ禍の影響を受けた日常生活、消費行動の変化がそのまま反映されたランキングになっています。上位(横綱)から、オンライン生活ツール、任天堂「あつまれ どうぶつの森」、応援消費、おうちごはん、無観客ライブ、テークアウト、手渡しなし宅配。ここまではコロナ禍の影響によるものです。

 それ以下でも、生鮮ネットスーパー、パナソニックホームベーカリー、カミュ「ペスト」、手作りマスク、ネックゲーター、バリカン&ヒゲトリマー、トランポリン遊具、ボードゲーム、アマビエあたりもコロナ対策の外出自粛、巣ごもり消費によってヒットしたものです。他の商品にしても、間接的に影響を受けているものもあるでしょう。

2020年6月9日付 日本経済新聞・電子版より
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60109740Y0A600C2MM8000/

コロナは社会の変化を加速させた

 色々なところで言われている指摘ですが、今回のコロナ禍は、人々の生活様式や行動を一変させたという見方と同時に、起こりつつあった変化を一気に「加速させた」という見方もできます。

 今回の番付でも、コロナ禍が起こる前から、新しいライフスタイルにあった価値の提案をしていた商品やサービスで、普及できるポテンシャルを持っていたものが、今回のタイミングで一気に普及のきっかけをつかむことができた、と考えられるものが含まれています。

 例えば、オンライン生活ツールの代表格であるオンライン会議システムは、コロナ禍前から徐々に普及しつつあり、特にZoomはすでに注目を集めていましたが、数あるオンライン会議システムの中でもその使いやすさが評価され、今年に入って一気にユーザーが増加しました。

 手渡しなし宅配については、再配達による流通業者の負荷を減らすための施策である宅配ボックス活用、コンビニ受け取りといった動きに続いて始められた「置き配」が一気に普及した形です。

 「バリカン&ヒゲトリマー」も、ビジネスマンの髪型に対する自由度やヒゲを受容する雰囲気、素地が少しずつ高まっていたからこそ、このタイミングでのヒットにつながったものと思います。

 そういった意味では、時代の変化を読み、その変化に合わせた(あるいは、変化を促すような)商品やサービスの提案ができる、ということは、これからも変わらず重要になります。商品やサービスがヒットするかどうかは実際リリースして初めてわかることで、実際リリースしてみて時代に対して少し早すぎた、といった事態は常に起こりうるわけですが、今回のように突然トレンドが変わった時、本来普及するポテンシャルを持っている商品やサービスであれば、ある日を境に「時代が追い付いてくる」ことが起こりうるので、「先を読む目」は、一層重要になりそうです。

 また、コロナの第2波に備えるという意味では、今後も色々な商品やサービスが生み出され、生活やビジネスを営む上での「選択肢」が増えることは、とても望ましいことであると思います。

クラウドファンディングも急成長

 さて、前回のブログでは、共感に基づいて支えあうこと・共創が今後の商品企画・事業企画のポイントの1つになるということを書きました。

 今回の番付の中では、「応援消費」がこの考えに当てはまるものかと思います。コロナの影響を受けて店舗営業ができなくなった飲食店や、販売先の休業によって出荷先を失ってしまった生産者を支援するためのEC販売サイト、紹介サイトが次々とオープンしましたし、そうした飲食店・販売先の当座の資金を調達するためのクラウドファンディングのプロジェクトが続々と立ち上がりました。

 クラウドファンディング運営事業者の大手「CAMPFIRE」のプレスリリースによると、当社の2020年5月の流通額は38.9億円(前月対比180%・前年同月比590%)、支援者数は39万人となり、先月に続いて過去最高額を更新しました。

 当社では2月28日から「新型コロナウイルスサポートプログラム」を開始しており、通常12%のサービス手数料無料、5%の決済手数料のみでプロジェクトが実施できるサービスを提供しています。このプログラムで資金調達を開始した事業者は延べ2,170社、支援者数は41.6万人、総支援額は44.1億円となり、平均して1社あたり約200万が支援された形になっています。また、調達した業種として、飲食業に次いで、コロナの影響で活動の場を奪われた形の音楽・芸術分野が多いことも、注目すべきことだと言えます。

CAMPFIRE社2020年6月1日付プレスリリースより
https://campfire.co.jp/press/2020/06/01/campfire-4billion/

 日本では、小口投資を束ねた形で資金提供が行われ配当・金利がリターンとなる「投資型」の普及が既存の法的規制などの影響で遅れたこともあり、支援者が支援した金額に応じたリターン(モノや商品、サービスなど)を受け取ることができる「購入型」が先行して普及しました。

 このため、クラウドファンディングをテストマーケティングやファン層の早期取り込みの機会として捉える見方もありますが、クラウドファンディングの本質である「資金調達」としての性格も理解され、資金調達の手段の1つとして認知・定着することは、特に小規模事業者、スタートアップ事業者の資金調達の手段が多様化するという点で、とても意義があります。

 また、CAMPFIREでは全国の自治体や商工会議所との連携を進めており、これによって関東・関西以外のエリアや幅広い業種でのプロジェクトも増加しているといいます。こうした動きも、さらに広がってほしいと思います。

消費者が共創の気持ちを持って商品を育て、「新しい社会」づくりに貢献しよう

 2020年下期は、「新しい生活様式」に対応した商品やサービスがどんどん提案されてくると思います。作り手にとっても、経験のない時代の中で新しい価値提案を行うことは容易なことではなく、商品やサービスの完成度が十分でないものも出てくるでしょう。

 そうした事態に対して、もし価値提供への気概が感じられ、事業者に「共感」できるのであれば、ぜひ事業者と価値を「共創」するつもりで、応援のために消費するとか、仕様改善の提案をするとか、アクションを取ってみてはいかがでしょうか。そうした消費者の働きかけとそれに呼応した事業者の努力の積み重ねが、新しい生活様式に対応した社会へと近づき、より成熟した消費社会を作り出すことに繋がると思います。

 また、この活動自粛期間に密かにアイデアを温め創作活動を行っていたクリエイターやアーティストの方々が、これからどんどん世の中に作品を送り出してくれるのでは、と期待しています。そうした活動をできる形で応援していきたい、とも思っています。


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