デザインマネジメントとSDGsの共通点

デザインマネジメントとSDGsの共通点

 11月10日、一般社団法人埼玉県経営者協会の主催する「デザインマネジメント3DAYSステップセミナー」の第1回が開催されました。サブタイトルは『「デザインマネジメント」の組織への浸透を通して、企業の独自価値(Only One Value)を創造しよう!』で、3DAYSステップセミナーという名前の通り、3回シリーズで開催するものです。全3回の内容は、次の通りです。

DAY1 デザインマネジメントの基礎知識を得る

DAY2 感性価値(独自性)の生み出し方に触れる

DAY3 デザインマネジメントの組織へ導入を体感する

デザインマネジメントとSDGs

 デザインマネジメントのセミナーの内容については以前のブログでも紹介しています。ただし、今回は3回シリーズにつき、デザインマネジメントの知識についてより深い内容が展開されました。以前のセミナー報告はこちら→

今回のブログでは、講義のあとに会場から寄せられた質問について考えてみました。 質問は、「デザインマネジメントは、CSVやCSR、SDGsと同じようなものなのか?」というものです。最初、私にはその質問の意味がよく理解できなかったのですが、SDGsについては先日私が美大で講義をした際も質問に出てきたキーワードであり、やはり今話題のテーマであることを認識しました。

 そこで、SDGs(持続可能な開発目標)について少しでも理解すべく、環境省が発行する「 持続可能な開発目標 (SDGs)活用ガイド」を読んでみました。これによると、SDGsの活用によって広がる可能性として 「企業イメージの向上 」「社会の課題への対応 」 「生存戦略になる」 「 新たな事業機会の創出 」 が挙げられています。

【「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド」より】
http://www.env.go.jp/policy/SDGsguide-honpen.rev.pdf

 一方、デザインマネジメントがもたらす効果としては、この日のセミナーでも紹介されていましたが、ハーバードビジネススクールのRobert Hayes(ロバート・ヘイズ)氏の整理が良く知られています。

① Facilitator(ファシリテーター/競争力促進ツールとしてのデザイン)

・ 考え抜かれたデザインは、製造コストを下げ、製品の品質や信頼性を高めるとともに、 メンテナンスコストやリードタイムの削減を可能にする

② Differentiator(ディファレンテーター/差別化ツールとしてのデザイン)

・ 機能、品質、価格、製造コスト、開発サイクルが似通った競合商品が溢れる市場においては、優れたデザインが競合からの差別化要素となり、顧客に選ばれる商品となる

③ Integrator(インテグレーター/統合ツールとしてのデザイン)

・ 良いデザインを生み出す過程で、デザイン、エンジニアリング、マーケティング、製造といった開発の諸段階における人と機能が統合されることで、部門間の壁がなくなり、開発プロセスの合理化が行われる

④ Communicator(コミュニケーター/コミュニケーションツールとしてのデザイン)

・ デザインは、企業のメッセージ、価値観、イメージを社内外に伝達し、共有させる

 このように見ると、SDGsに基づく経営戦略の実行と、デザインマネジメントの推進には、似たような効果が期待されることが分かります。この点においては、両者は同様のもの、という見方ができるのかもしれないなと、少し納得しました。

デザインマネジメントは「ユーザーファースト」「人間中心」

 では、挙げられたような効果を得たいと思ったときに、SDGsに基づく経営戦略を取ることと、デザインマネジメントに取り組むこと、企業はどちら(あるいはさらに別の手段)を選ぶべきなのか?ということですが、これはやはり優劣ではなく、経営者が、現場が、より納得感を持って取り組める形を選ぶということだと思います。もちろん、両方に取り組むこともできるでしょう。

 また、あくまでも私の考えですが、企業のタイプによっても取り組みやすさが変わるのではないか、と思いました。すなわち、自社がこれまで「ユーザーと向き合う」ことに注力してきたか、それとも、「社会、業界に向き合う」ことに注力してきたか、という企業としての固有の姿勢、文化の違いによって、です。

 もし、「ユーザーと向き合う」ことに取り組んできた企業であれば、デザインマネジメントを取り入れることでその姿勢をさらに強化することができると思います。真摯にデザインに取り組むことは、「ユーザーファースト」「人間中心」の意識、文化をさらに深化させることにつながるはずです。

 一方、SDGsの考え方は、世界の市場が、競争環境がこの考えをベースに動いていく、ということが起点にあります。したがって、業界の動向、マクロ経済の動向を重視した経営をしてきた経営者にとっては、取り組みやすいように思います。また、対象市場の環境変化が大きい産業(例えば、今後市場規模の縮小が避けられない産業)において、対象市場に提供する価値を捉え直したり、あるいは、新しい市場機会を見つけたい場合には、自社の競争環境を見つめなおすフレームワークとして、SDGsをベースにする考え方は有用かもしれません。

目的のない活動に意味はない

 最後に、冒頭の「デザインマネジメントは、CSVやCSR、SDGsと同じようなものか」という問いに対する私なりの答えですが、

「デザインマネジメントは経営課題の解決のために用いるもの。CSV、CSR、SDGsを、同じ目的で使うならば同じようなものと言える」

というのは、過去話題になったCSVやCSRについては、明確な目的は見えないが、世間で話題になっているから取り組んでいるように見える企業も少なからずありました。また、「やらないと取り残される」といういわば恐怖マーケティングの手法で、企業の取り組みを煽るような動きもあったように感じます。しかし、本質的には「課題解決」のために取り組まないと意味がないし、非常にもったいないと思うのです。そして、急激に広がりを見せているSDGsにも、同じような危惧を抱いています。特に、リソースの限られた中小企業は、まず自社が取り組む目的をしっかり設定することが大切だと思います。

 VALUE LABOの活動では、企業が、経営者が解決すべき課題を一緒にみつけ、その課題を解決するため、それぞれの企業にとって適切な形で、デザインマネジメントの導入を支援していきたいと思っています。

【参考】(一社)埼玉県経営者協会 トップセミナー ※会員向けセミナーです

デザインマネジメントセミナーDAY2(12/17)案内

デザインマネジメントセミナーDAY3(1/15)案内


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