12月17日、一般社団法人埼玉県経営者協会の主催する「デザインマネジメント」3DAYSステップセミナーの第2回(DAY2)が開催されました。今回は【「感性価値」がビジネスを創る!〜「デザインマネジメント」による企業独自の価値の生み出し方〜】と題して、テクノロジーやマーケティングの進化による「正解」がコモディティ化した時代との向き合い方、直感や感性を経営に取り入れていく「感性価値(独自性)」の重要性について、デザインマネジメント専門家の草野氏より講義がありました。
11月に行われたDAY1は、デザインマネジメントという考え方を経営者、責任者の方に知ってもらうことが目的でしたが、DAY2は、デザインマネジメントを活用する上で経営者やメンバーが大切にするべき「感性」「直感」「美意識」などについての理解を深めることが狙いです。デザインマネジメントを取り入れる上での態度(attitude)、心構え(mindset)と言ってもよいかもしれません。
私自身も以前、類似したテーマで草野さんのセミナーを聞き、その内容の尖り具合に驚きました(笑)。中でも印象に残っているのが、今回のセミナーでも紹介のあった「センス」についての話です。
「センス」とは、働かせるもの
「センス」という言葉は、英語では「感覚」「ものの見方・考え方」などを意味します。つまり、センスとは人間が「感じるもの」「働かせるもの」であると言えます。
一聴すると当たり前のことを言っているようですが、日本で「センス」という言葉を使う時、しばしばセンスは「良し悪し」があるものとして語られます。例えば「あの人にはセンスがある」「このデザインにはセンスがない」のように。
このような使い方が一般的な日本では、センスとは「人によって優劣があるもの」「選ばれた人だけが持っているもの、才能」という感覚が強いようです。その結果、デザインに関しても、経営者の中には「自分はデザインのことは分からないからデザイナーに丸投げしたい(すればいい)」といった発想をしてしまう人が少なくないのです。
しかしながら、「センス」が本来「働かせるもの」であるならば、自分にはセンスがないから、といって理解することを止めてしまうのはそれこそナンセンスということが言えるでしょう。もちろん、もともとある能力をさらに研ぎ澄ますことはできるでしょうが、そもそもセンスがないと考える必要はないのです。
デザインセンスには2つのセンスがある
そして、デザインに関わるセンスとしては、
感じる=インプットする感受性としてのセンス
表現する=表現するアウトプットとしてのセンス
の2つがあります。このうち、「表現する」センスについては、訓練を積み、技術を持ったデザイナーがより力を発揮できるものですが、一方「感じる」センスについては、そもそも人間が持ち合わせている能力であり、まして、自ら事業を切り開いてきた経営者であれば、むしろ「武器」としてよいくらい、発揮するのが得意な領域のはずだ、と草野さんは言います。そして、インプットとしてのデザインセンスが強い経営者と、アウトプットとしてのデザインセンスが強いデザイナーが組むことで、デザインマネジメントが強力な効果を発揮することが期待できるのです。
五感を磨くコツ
そして、センスをより強力に働かせるために「五感を磨くコツ」として
・とことん「感じる力」を高める場所に行く
・「自分のなんとなく」なくを丁寧に大切にする
・「感じる」にとことん向き合う作業をする
の3つが紹介されました。「感じる」という作業は、ややもすると忙しい日常の業務にとっては役に立たない作業に思えるかもしれません。ただ、経営とは中長期的な視点に基づいて考えるべきものであり、すぐには役に立たないかもしれないことが、どこかのタイミングでふと役に立つことが出てきます。だから、日常業務のオペレーションはもっと得意なメンバーに任せて、経営者はとことん「感じる」ことに打ち込むべきだ、というメッセージは、参加者にも印象的なメッセージだったようです。
1月に開催する3DAYSセミナーの最終回は「導入編」として、実際に組織でデザインマネジメントを活用する方法について、私が登壇してお伝えする予定です。過去2回、参加者の皆さんの熱心さをひしひしと感じましたので、その熱に負けないような時間にしたいと思っています。