デザインを活用するステップを知ろう

デザインを活用するステップを知ろう

 これまで2回のブログでは、私の考える「経営のデザイン」が、デザインマネジメントにおける「マネジメントのデザイン」( Designing Management :デザイン能力と創造性を高めるための人的資源管理、組織体制の構築や、デザインを核に据えた経営戦略の立案、実行)の実現を目指すものであること、その実現が中小企業にこそ求められると考えていることについて紹介しました。今回は「経営のデザイン」の具体的な取り組み方法について紹介する前段として、企業におけるデザインの活用度を測り、デザインマネジメントで到達すべき姿を示す指標の1つである「デザインラダー」について紹介します。

デザインの活用度を測る「デザインラダー」

「デザインラダー」は、デンマーク・デザインセンターが企業におけるデザインの活用度を理解するための方法として提唱しているモデルです。ステップが進むほど、デザインが企業にもたらす価値が大きくなる、としています。 ※ラダー(ladder):はしご

デザインラダーでは、次の4段階でデザイン成熟度を分類します。

【ステップ1:デザインの活用がない(Non-Design)】

・デザインが、製品やサービスの開発においてほとんど活用されていない。

・デザイナーではない担当者のみで、ユーザーの視点を考慮されないままに開発が行われている。

【ステップ2:外見としてのデザイン(DESIGN AS FORM-GIVING)】

・デザインが、製品やサービスの開発の最終段階でのみ考慮され、外見を整える「スタイリング(Styling)」の作業が行われる。

・専門のデザイナーが担当することもあるが、主には他の部門の人間が行う。

【ステップ3:プロセスとしてのデザイン(DESIGN AS PROCESS)】

・デザインが、開発の初期の段階から活用されている。「結果」ではなく問題解決への「アプローチ」として活用されている。

・デザインによる解決策(ソリューション)は社会的な課題やユーザーのニーズを起点に発想され、解決策の検討には社内外の専門家(ものづくり、マーケティング、行政etc…)の知見が活用される。

【ステップ4:戦略としてのデザイン(DESIGN AS STRATEGY)】

・デザイナーと経営陣が一緒に事業のコンセプトを検討する。

・ビジネスモデルにおいて、デザインが戦略的に主要な要素として位置づけられている。

デザインラダーが示唆するもの

 デザインラダーの意義は、企業におけるデザインの活用度を把握できることはもちろん、「デザイン」という言葉が幅広い概念や思想を含み、単なる「見た目」という意味から、解決策を導くもの、経営戦略の要素となるものへと発展していくものである、ということにあると思います。

 デザインをどのように活用するか、という視点において、「問題解決に貢献するデザイン」は、日本からも多くの優れた製品・サービスが生み出されています。ただし、例えばAppleの製品、MacBook、iPhone、iPadといった一連の製品に見られるデザインの統一感や世界観が、日本の家電ブランドの製品群から感じることは難しいように思います。すなわち、「戦略としてのデザイン」の組織への浸透が、不十分な企業が多いのではないでしょうか。

 ちなみに、あるセミナーで「イタリアの産業にはデザインラダーは当てはまらない。イタリアには、モノや形や色にこそ経営戦略を込める思想があるから」とのくだりがあり、なるほど、さすがイタリア!と思ったのですが、国内においても世界的に見ても、そのような企業はまだまだ多くないのではないかと思います。

 皆さんの会社で、デザインはどのように位置づけられ活用されているのか?ぜひ考えてみてください。

中小企業のほうが階段を登りやすい

 デザインラダーを見ると、デザインの活用度を高めるポイントは、経営者がデザインを理解して活用に努めること、あるいは、経営者とデザイナーの距離を縮めることにあると解釈できます。そして、こうした取り組みは、企業規模が小さいほうがより容易であると考えられます。この点でも、デザインマネジメントと中小企業は相性が良いと思っています。

 そうは言っても、「デザインについてはよく分からない、センスがない」「そもそも社内にデザインできる人間がいない、社外のデザイナーとどこで探せるのか分からない」「デザイナーとどうコミュニケーションをとればよいのか分からない」などと、懸念を持たれる経営者の方も少なくないでしょう。ただし、今日「デザインは分からない」といって済ませることができる業態・業界は少なくなっていると思います。業界のことを学ぶ努力、自社の財務状態を理解する努力が経営者に必要であるのと同じように、デザインについて理解する努力が求められる時代になっていると思います。 VALUE LABOの活動では、経営者の方のデザインへの理解を深める、社内におけるデザインの創造力を高める、社外のデザイナーとのコミュニケーション、共創をスムーズにするようなサポートを提供することで、「デザインが戦略として機能する」組織を作るお手伝いをしたいと考えています。

参照HP: デンマーク・デザイン・センター


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