創業計画は、「経営のデザイン」の第一歩

創業計画は、「経営のデザイン」の第一歩

 現在、毎週末に創業スクールの講師として登壇をしています。創業のアイデアを考えることから始めたい方、具体的なビジネスアイデアがある方、すでに事業を営んでいる方など、様々な方が受講されます。

 どんな事業でも、経営資源の制約を受けて行われることになりますが、創業の場合は特に「今ある経営資源」「今調達可能な経営資源」でスタートしなければなりません。その中でどのように創業後の道筋を作るのか、それはまさに「最初の」経営のデザインといえると思います。

必ずあるのは「自分自身」

 経営資源はいわゆる「ヒト、モノ、カネ」と言われ、そこに「情報」が加わることもありますが、私が創業志望者の方への話題に挙げる際には「ヒト、モノ、カネ」までで説明します。創業時の「情報」は、多くの場合「ヒト=経営者」に由来するものとして説明できてしまうからです。

 どんな創業者でも必ず持っている経営資源、それが「創業者自身」です。創業者が持っているスキル、知識、技術はもちろん、人的ネットワークや情報のネットワークなど、ビジネスを行う上で有用な資産を活用するほうが、スムーズなスタートを切れる可能性が高くなります。もちろん、強い興味がある新しい領域でビジネスをしたい、という気持ちを否定することはありません。そのような場合には、一から新しい知識や技術の習得などに一層の努力が求められますので、その努力を続けられる強い意思を持つ必要があります。

 創業スクールの冒頭では、受講生の皆さんにはこれまでのビジネス経験、さらにはそれ以前のことや趣味のことも含めて、人生の棚卸しをすることをお勧めしています。特に楽しいと思った仕事、趣味、特技などなど、自分の能力や価値観について深く掘り下げることをお勧めしています。

 ちなみに、自分のことはよくわからない、という方には、「周りの人にしてあげて喜ばれたこと」「他の人の役に立ったと感じたこと」といったように、他人の評価を基準に探してみることをお勧めしています。さらに、可能なら、周りの人にあなたの強みを聞いてみてください、ともお伝えしています。

「モノ」・「カネ」・・・何から投資をするか。

 「モノ」・「カネ」についても、十分な状態でスタートできる創業者は少なく、限られた資金を何に投資するか、という意思決定が必要になります。初期にどれくらいの費用(投資)が必要かは、どんなビジネスを行うかによって変わってきます(店舗や事務所を構える必要があるのか。製品を作るための設備が要るのか。身体一つあればよいのか。など)。

 例えば、駅前でカフェをしたい、と思っているけれど、不動産を借りる費用がない時。こんなときに、創業者の方に意識してほしいと思っているのは、自分のビジネスがターゲットにしたいお客様は誰なのか、ということです。とにかくカフェを持つことが目的だ、という方もいるでしょうが、例えば駅前にはオフィスや学校が多数あり人通りが多いからその人たちを顧客にすればコーヒーを飲んでもらえるのでは、ということであれば、いわゆる「路面店」を出すことだけが事業の形態ではありません。テイクアウト需要を見越して、コーヒーのデリバリー専門店を作っても事業が成り立つかもしれませんし、コーヒーを販売してくれる小売店を探してもいいかもしれないのです。

また、自分のビジネスが解決しようと思っている問題は何なのか、という視点も有用です。ほとんどの場合において、ある問題に対して解決できる手段(ソリューション)は1つではありません。働くお母さんの保育をサポートするのに、保育園を作ることには相応の投資が掛かりますが、ベビーシッターとして活動する分には、投資を掛けずに始めることも可能でしょう。

そして、自社の資産に応じて事業を拡大する計画を立てることも有効です。資金ができれば路面店を出すことを見込みつつ、まずは違う形態、より投資の小さい形態で創業することを計画するのも一案かと思います。

創業者にとって一番大事なステイクホルダーは、、、?

 創業計画は、自分自身の行動計画となることはもちろん、創業者のステイクホルダー(利害関係者)に説明して、創業者が望む何らかのアクションを取ってもらうために作成するものです。したがって、創業計画を作るにあたって、「この計画を誰に見せるつもりで作るのか?」というお話もして、その相手が動いてくれるような、説得ができるような計画書にしましょう、とお勧めしています。目的には金融機関で融資を受けるため、ベンチャーキャピタルに出資を検討してもらうため、取引先を確保するためなど、様々なものが考えられます。そして、初めて創業するという方の場合には、現時点で最も重要なステイクホルダーが「家族」であることも少なくありません。

 もともと会社勤めしているが会社を辞めて創業して考えている創業者にとっては、会社を辞めても家族は暮らしていけるの?という疑問に答えなくてはなりませんし、家族(世帯)としての預貯金を開業資金に充てたいと考えているのであれば、その資金が無駄にならない、ということを示す必要があるでしょう。もちろん、ビジネスが絶対に成功するという保証は誰にもできませんが、だからこそ、こんな風に計画を立てて失敗しないように進めている、と説得する意味があるとも言えます。また、開業時の人手が足りないので、協力してもらう約束を取り付けたい場合もあるかもしれません。

 ご家族の理解を得ることは、ロジカルな説明だけで終始できるものではないかもしれませんが、まずは一番身近な方を説得することにチャレンジするのも、有意義だと思います。


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