自社のロゴマークを作ったら、「デザインの力」を再認識できた

自社のロゴマークを作ったら、「デザインの力」を再認識できた

自分の社名が今一つしっくり来ない問題

現在の法人名である「タツノ経営デザイン」という屋号は、2015年1月に個人事業主として開業届を出した時から使っていて(個人の時に表に出すことはあまりなかったですが)、2016年1月からは社名として使っています。法人を作る時には色々と決めることがありますが、一番悩んだのは社名でした。

まず、「経営デザイン」という言葉は使いたいと思っていました。文字通り「経営をデザインする」という姿勢を大事にしたいと思ったのと、「デザイン」という言葉にものづくりへの思いを表せると思ったためです。そして、「経営デザイン」に合わせる言葉を色々考えました。特に、苗字じゃない言葉を合わせられないか、思案してみましたが、苗字じゃない言葉を付けるのは何だか仰々しい感じがして、ハマるものがありませんでした。また、「タツノ」というのはそんなにある名前ではないので覚えてもらいやすいのではという妻の意見があり(確かに人生で下の名前で呼ばれたのは皆無だし、同じ苗字の方にお会いしたことは2~3回しかない)、苗字を冠することにしました。

こうして、以来5年間使ってきた社名だが、何かもっとなかったかな、という思いはいつもどこかにありました。要は「しっくりこない」ってやつですね。

デザインの力で社名が好きになれる?

そんな折、同じように自分の屋号にしっくり来ていない、というSNSの投稿を読みました。それは、私が講師を務める本庄早稲田創業スクールの2期生(2016年)であるデザイナー・山路晴巳さん(すみれデザインHP)の投稿でした。彼女も創業して4年間、同じような思いを持っていると。その投稿に私がコメントを寄せ、やり取りしたことが、ロゴマークを作るきっかけになりました。そのやり取りは、こんな感じです。

辰野:私もこの5年間、なんで苗字を社名に入れちゃったんだろうってずっと思い続けてますよ。創業スクールの課題で、社名は大事と言ってるくせに

山路さん:えーカッコイイ名字だから良いじゃないですか‼️一見タツノコプロみたいで良いです‼️(褒めてます)

辰野:なるほど、ありがとうございます。あー、タツノコプロは気づかなかった。気づいていればもっと寄せてたな

山路さん:大丈夫です、ロゴマークで寄せることはできますよ!私に御用命頂ければ、タツノオトシゴをモチーフにしてデザインしますよ‼️笑

辰野:なるほど、それは面白そう!発注しちゃって良いですか?

山路さん:えっ本気ですか⁉️ロゴマークはブランディングの要にもなる重要なデザインですから、詳しくヒアリングしますよ‼️後ほどご連絡致します‼️

このやり取りでロゴマークを発注することを決めましたが、決め手は、「リスペクトしているものに、デザインをモチーフにすることで近づける、寄せることができる」という山路さんの提案が、私のツボにはまったことに尽きます。物心ついた時からタイムボカンシリーズを作ってる「タツノコプロ」の中に自分の名前が入っていることは意識してきました。ただし、山路さんにSNS上で指摘を受けるまで「タツノコプロに寄せる」発想は私の中にはありませんでした。

そして、「デザインの力で、自分の屋号が好きになれるのかもしれない」という可能性にワクワクして、発注することに決めました。

自分の嗜好や価値観が可視化されていく過程

ロゴマーク作成のためのヒアリングは、アンケートフォームや資料にやり取りで、すべてオンラインで進めていきました。デザインテイストの好き嫌い、事業への思い、色の好みなどのヒアリングを受けつつ、少しずつ形になっていくのがとても楽しい作業でした(私は質問に答えているだけですが)。私は日頃、経営者の方や現場の方に話を聞きながら、その会社の特徴や強みを見つけようとしていきます。そうして見出した強みを指摘すると、必ずしも経営者が強く意識していないこと、自分では当たり前だと思っていることもあり、経営者が驚いたり、ご自身にとって新しい気づきがあったことに感謝されることもあります。今回は逆の立場になり、自分の嗜好が見える化されていく過程が、とても面白かったです。

山路さんとのやり取りはとてもスムーズに進んだと思います。それは、山路さんの検討プロセスが精緻にデザインされていたことがまず第一の理由ですが、もう1つ、我々のバックグラウンドがあると思います。それは、2人とも大手家電メーカー出身であること。私はP社、山路さんはS社、たぶん我々が在籍している頃はよき好敵手だったと思われるが今となっては…そんな話は良いとして、やはり同じ家電業界だと、プロダクトのブランディングの考え方(考える手順、枠組み)に共通のものを感じます。なので、山路さんの進め方、解釈に違和感を感じることがほぼありませんでした。

こうして出来上がったデザインは、タツノオトシゴをモチーフにしたデザインと、屋号の装飾文字の組み合わせで、シンプルなものになりました。タツノコプロ・リスペクトなもの以外の方向性の物もご提案を頂いたのですが、一番シンプルで、私の好きな赤がパッと目に飛び込んくるものが気に入り、選びました。

【最終提案資料①】
【最終提案資料②】

ちなみに、制作過程では家族に見せて意見をもらったりもしましたが、一番冴えたコメントは、次男の「マークがどれになるかで何か変わるの?」でしたが…違うんだよ、何よりもまず父の心持ちが(いつか説明してあげよう)。

デザインの力

ロゴマークを考えながら、「ステッカーを作りたい」「ハンコにしたら楽しそう」といった思いも生まれ、ハンコにするならどんなロゴ?ステッカーとしてイケてるのは、、、といった観点も生まれてきました(その観点だけで決めたわけではないですが)。「形にしながらしながら考える」「形あるものに触れることで新しい考えが生まれてくる」まさにデザイン思考のプロトタイピングを実践している感じでした。デザインされたものを見て新しい発想が生まれるのは、「デザインの力」に他ならないでしょう。

また、ハンコを作る、という発想から、ロゴマークを丸囲みすることをチョイスすることになりました。最初は「百貨店みたい」と思ったのですが、百貨店のロゴが持っている「老舗感」のような雰囲気がいいなと思うようになりました。形にして見てみることで、自分の考えが変わっていくのも、また面白いものです。

さて、ロゴマークが完成して、「自分の屋号が好きになったか」ということについてですが、色々な場所(Webサイト、SNSバナー、ステッカー、ハンコ…)で見かけるにつけ、どんどんロゴマークとそれと並んだ社名が自分に馴染んでくる感覚があります。好き嫌いが変化する感覚というよりは、「自分のもの」になっていく感覚でもありました。

ということで、これからはこのロゴを色々な所に使って行きます!


デザインマネジメントカテゴリの最新記事